《短編》夏の雪
車に戻り、そのままエッチした。
雪ちゃんにとって、そういう行為は、動物がじゃれ合うようなものなんじゃないか、と。
そこには何の感情もない。
「夏美」
雪ちゃんは気まぐれにあたしを呼び捨てにして、このひと時だけ支配する。
冷たい指。
でも心まで凍ってるわけじゃないと、あたしは知ってる。
雪ちゃんと体を重ねること。
それは、風のような、雲のような雪ちゃんを、この瞬間だけは掴めること。
どこにでも行ける雪ちゃんが、今はあたしの中に留まっている。
頼りない月明かりだけが照らす中、雪ちゃんはあたしを見下すように目を細めた。
「俺夏美のことわりと好きだよ」
雪ちゃんの汗が落ちてくる。
なのにやっぱりその指先だけは冷たくて。
「体の相性もいいみたいだし」
母性本能をくすぐるような顔しやがって、腹立つなぁ、もう。
きっと雪ちゃんは、あたしに対して嘘なんて言わないだろう。
何かを隠す意味もない。
だからそれは、雪ちゃんなりの正直な気持ち。
「……雪、ちゃん……」
あたしも好きだよ、雪ちゃん。
愛でも恋でも何でもないけど、でも好きなの。
変だね、あたし達。