愛を教えて。
「白石さん」というのは私のこと。







財布を開くと、相変わらず無表情の諭吉の顔がたくさんこちらを見ていた。



一時間ほど経って、支払いを済ませると、私はすっかり夜の街と化した繁華街へ出た。










「いま何時だろう」










時計を見ようと腕を見ると、今朝まであったはずの時計がない。







「そっか……」







また、買わなきゃな。







夜の街に背を向けて、街頭がまばらに照らす住宅街の方へ私は歩みを進めた。







これが私の日常。



変わることはないと、変えることはできないとあきらめていた日常。







自分からは変える気は毛頭ない。


もっと面倒くさいことになりそうだから。







これ以上、煩わしいことは増やしたくないの
< 3 / 64 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop