愛を教えて。
答えることができない。
答えてしまえば、即家にあがりこんで、やりたい放題して、翌日また、大勢の“友人”を連れてくるんだろう。
私のテリトリーが侵されていく。
「なんで黙ってんのよ」
次第に、糸井エリナの方も、煮え切らない私の態度にいらつき始めたようだ。
でも、返事はしたくない。
かと言って、言い逃れはできそうにないし…。
カツン
金属と金属がぶつかる音が、手元から聞こえた。
「「あっ」」
私と彼女の声が重なる。
糸井エリナの腕につけていたブレスレッドと、私の兄からもらった腕時計がぶつかった音だった。