Fahrenheit -華氏- Ⅱ
おのれ二村め!
わざとか!?わざとだよなっ!!
俺が歯軋りをしながら二村を睨んだが、二村はまだ放心状態の瑠華の元へ素早く回り込み、ひたすらに頭を下げていた。
わざと……には見えない…
「柏木さん、本当にごめんなさい!」
ひたすら頭を下げる二村に、瑠華もそれ以上言えないのか、ちょっとだけうな垂れると、
「……いいです」と軽く手を挙げた。
瑠華…優しいけど……
きっと心の中はブリザードが吹き荒れてるだろうな…俺は隣に居るだけなのに、冷気で凍え死にそうだ。
瑠華の仕草は「お願いだから、どこかへ行ってください」と物語っていた。
まぁ瑠華が声に出して怒りを表さないのは、二村がわざとやったわけじゃないと思っているんだろう。あれはトラブルだ。
そんな雰囲気に気付かないバカ二村は、
「本当に…?ごめんね、お詫びに今度奢るから」
なんて言って心配そうに瑠華を覗き込んでいる。
「あ!じゃぁ僕も奢ってもらおうかな~」
と、佐々木がフォローに出る。
瑠華の不機嫌をいち早く察知したようだ。
瑠華がキレる前に、二村を追い出そう作戦だな。ナイス!佐々木っ!!♪
だが…
「柏木さんだけです。俺、飯食うのは(可愛い)女の子がいいです」なんて真顔でさらり。
ブッチーーーーっ!
瑠華が切れるより、俺の方が早かった。
ガタガタっ!
俺は盛大に椅子を鳴らして再び立ち上がった。