Fahrenheit -華氏- Ⅱ
部署を区切るパーテーションに張り紙を貼り付け、それでも二村が申し訳なさそうに顔を出す。
「すみません。柏木さ~ん…」
お前は瑠華のことしか気にしないのかよ!
俺だって散々な目にあったってのに!!(ちなみに佐々木のはバックアップを取ってあって無事だったらしい)
それでもまだしつこくこちらを気にしている二村に、瑠華が呆れたように吐息をついた。
「二村さん、私のディナーは世界一高いですよ。
USドルでおおよそ200万ドル、日本円にておおよそ1,400万円の損害です。あなたが保障を?」
ンゲ!
二村は顔を青くして、それでも慌てて深々と腰を折ると、逃げるように立ち去っていった。
おのれ二村め!
瑠華の損害は俺の損害でもある。どぅしてくれるって言うんだよ!!
―――パソコンの電源が切れると言う不測の事態が起こったことを、裕二に説明すると、すぐにヤツが来てくれた。
「バックアップをとってなくても、本体から復元できる。ただし時間はかかるがな」
と、いつに無く頼もしい裕二に感謝!♪
瑠華も先ほどのテレビ電話を再開させ、こちらは先方にトラブルがあったことを伝えるとあっさりと取引きを再開させるこができた。
佐々木は、すぐにメインサーバーのバックアップシステムからデータを取り出して、仕事を再開させることができ、
それでも唯一俺だけが裕二の手を借りなきゃ仕事ができない状態。
「時間にして30分弱ってとこだな。ついでに電源コードも綺麗にしといてやるよ」
なんて、ありがたいお言葉。
30分かぁ……
―――…と言うわけで、俺はその開いた時間に会長室を訪れた。