Fahrenheit -華氏- Ⅱ



瑠華がパウダールームを出ていって、俺は再び髪を乾かす作業に戻った。


ごしごしとタオルで拭いながら、


俺、どうしちゃったのよ。


前だったら女に携帯見られたら「ありえねぇ」ってブチキれてたってのに。


実際、そのことで喧嘩になって関係が切れた女たちも数人いた。


瑠華は断りを入れてくれたけど、中には俺が不在のときにこそっと覗く無粋な女も居た。


あの頃、俺の携帯には見られたくないヤバい連絡先がいっぱいだったからな。
(言うまでもなく、そのほとんどが女だが)


今は瑠華以外の女には全くの興味がないし、登録したいとも思わない。


俺、変わったよな…ってか成長したのか??


前だったら綾子に


『これ、あんたの女たちに売ったら高く売れるわよね♪オークションに出品しようかしら、いくら値がつくかしらね』


なんて、おっそろしいことを言われて慌てて綾子の手から携帯を奪い返したこともあったが。


今はたとえオークションに出品されても全然、大・丈・夫!♪


見られてまずい会話なんて(メールも)してないし、そもそもそんな相手はいない。


何てご機嫌にタオルで髪を拭っていたが、


………ん?




「やっべ…」





――― 一人居た。




それも一番最悪な相手―――





“真咲”






あいつのナンバーが登録されてる。





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