Fahrenheit -華氏- Ⅱ


瑠華とシロアリがフロアから去って行って2分。


俺は瑠華からしつこく指摘されていたレイズ株式会社の髙木さんにメールの返信をしようとしていたが…


メール画面には


“気になる、気になる、気になる!”


と無意識に打ち込んでいた。


………


俺は…何をやっているんだ…


けど…


ぐわっ!何でこんなに二人が気になるんだ!


悶々としたままメールを作成していたが、それも3分で限界を迎えた。


ガタッ!


突如椅子を鳴らして立ち上がった俺をまだ仕事をしていた佐々木が怪訝そうにして顏を上げたが、その顔色を見てすぐに不安そうに曇らせた。


「何かトラブルでも…?」


俺がよっぽど深刻そうな顔をしていたのだろう、心配そうにしていたが


「いや、ちょっと行き詰っただけだ。タバコ吸ってリセットしてくる」と言うと佐々木はそれほど深く突っ込んでこず


「分かりました」と深刻そうに頷いた。


タバコ吸ってくる、なんて完全なる嘘だったが佐々木は疑った様子はなく、3分ならまだ間に合うかも!と言う思いで俺は廊下を急いだ。


案の定、瑠華とシロアリはエレベーターの到着を待っているところで、運良く(?)エレベーターが到達して乗り込むところだった。


「柏木さん!」


俺はほとんど何も考えず声をかけていた。


ほとんどエレベーターに乗り込もうとしていた瑠華が顔を上げこちらを振り返る。


「何か?」


何…か?


しまった!


大した理由も用意していなかった俺は咄嗟にとってつけたような言い訳で「その……ちょっと確認したい案件があって、急ぎだったから…」ともごもごと言うと、瑠華は怪訝そうな表情を浮かべず相変わらずな無表情で


「分かりました。緑川さん、すみません先に下に行ってていただいて宜しいですか?すぐに向かいます」と言って、すでにエレベーターに乗り込んだ緑川に一礼すると、シロアリの方もそれほど疑いを持っていないのか


「分かりました。下で待ってます」と言ってエレベーターは閉まった。
< 582 / 635 >

この作品をシェア

pagetop