Fahrenheit -華氏- Ⅱ
瑠華の今日の服装は―――
白地にカーキのハーネス柄をあしらった華やかな膝丈の柄スカートに黒のV開きノースリーブニット。
近くに薄手のノーカラージャケットが置いてあるからそれを羽織るつもりなのだろう。
今日も俺好みの素敵なお召し物で♪
瑠華のむき出しの白い二の腕が目に入った。
背中からわきに続く線が、何とも色っぽくて眩しい…
じゃなくて。
彼女の片腕に施された黒一色のトライバル模様のタトゥー。
腕のぐるりを囲む蔦に、その中央に施されたハートとも取れる絵柄。
アメリカの大財閥、ヴァレンタイン家の紋章だ。
どっちかって言うとお姉さん系の瑠華には、そのタトゥーは不釣合いだ。
だけど俺はそのタトゥーに込められた意味も、気持ちも知っている。
俺は瑠華に近づくと、後ろからぎゅっと抱きついた。
「どうしたんですか?」
瑠華が手を休めて首を捻る。
「ん~…ちょっとねぇ」
曖昧に答えて俺は瑠華の肩に頭を乗せた。
目の前にタトゥーがあって、俺はその絵柄にそっと口付けをした。
「ニューヨーク行って何する予定?」
「家に帰ったり友達と遊んだり。そんなとこですかね」
瑠華はのんびり答える。
彼女の言葉を聞きながら、俺は一ヶ月前彼女が電話をしていた会話を思い出した。