Fahrenheit -華氏- Ⅱ


心音はもう風呂をシャワーを済ませたのか、今はゆったりとした短めのオールインワンに同じ柄のガウンを羽織っていた。


「ただいま、はい。これお土産」…と言うにはあまりにもお粗末だったけど。心音はまるで子供のようにわくわくと目を輝かせコンビニのビニール袋をがさがさ。


「Wow!!何これっ!最高じゃない!あっち(NY)でも大人気なのよ」と心音はアニメのビスケットを手に取りはしゃぐ。


「心音、好きなの?」


「ううん、あたしはあんまり興味がないけど参考程度に見てるぐらい」


その割には嬉しそうだ。そのビスケットの箱をまじまじと見つめながら


「ねぇ、ゲームの登場人物たちをこうやってお菓子のパッケージにしたら売れると思わない?」


なるほど、ビジネスの為ね。心音らしい。


「早速参考にするわ」


喜んでもらえて良かった……?


「今日はね、昨日Checkした天ぷら蕎麦を食べに行ったの!ケイトが作ってくれた天ぷらが美味しかったから」


心音が説明してくれたのはここら辺でも名の知れたちょっとした料亭だった。


夜はそれなりに値が張るけれどランチなら割とお手軽に食べられるらしい。


「ディナーは?」と聞くと


「それがね~、何か色々悩み過ぎちゃって、結局選びきれなくてマクドナルドにしたわ」と心音はため息とともに肩を竦める。


「マクドナルド?あっちでもあるでしょ、何で敢えてそこなの」


「日本のマクドナルドがどうなのか気になったってのもあるわ。パティ(お肉)がジューシーで味付けも最高ね。普通のが美味しかったから照り焼きバーガーを食べたのね、


あれ、最高にエキサイティングな味だったわ。


Crazy(クレイジー)としか思えない組み合わせだったけど、やっぱChallenge(チャレンジ)は必要でしょ?」と心音は楽しそう。


まぁ、心音がそう言うのならいいのか。


心音は―――いつだってそうだ。気になったものには躊躇なく手を出し行動する。その行動力は羨ましい……





「明日は時間取れると思うから一緒に夕飯食べましょ」と提案すると


「ホント?あたし行きたいラーメン屋を見つけてね!」と心音はあたしの腕に縋りついて目を輝かせる。


ラーメン……まぁニューヨークでは少ないけど。


「本場の味を知りたいの」と心音は至極真剣。


その剣幕に押されてあたしは頷くことに。心音らしい。


あたしはバレンティノのコートを脱ぐと、ソファに置いた。


「それ、気にいってくれた?」と心音はソファの背もたれに腕を置き、反応を窺うように目をあげた。


「凄い注目を浴びたわ。ちょっと派手じゃない?」


女性からも男性からも。


「Uh-huh(ふーむ)瑠華に似合ってると思ったのに」と心音は顎に手を置き、脱いだコートに視線を向ける。


「瑠華が好きなデザインでしょ?」


まぁ確かに昔はそれなりに好きだけど。言うまでも無く心音がプレゼントしてくれたコートだ。


「昨日散々つきあわせちゃったから、ほんのプレゼントよ」と心音は楽しそう。ほんのプレゼントが60万も…しかもバッグも靴も合わせて総額100万越え。


それは注目も浴びるわよね。


「良く似合ってるわよ」と心音は楽しそうだ。


「好きだけど」


ここで私は言葉を濁した。




「でも、昔を思い出したわ」





毎日高級ブランドの服で身を包んでいたあたしを、想いだした。


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