Fahrenheit -華氏- Ⅱ
シャワーを浴び終え、髪を乾かすこともなくバスローブ姿でタオルで髪を拭いながらリビングに向かうと、心音はあたしがお土産で渡した新作のチョコレートを食べながらビールを飲み、テレビのバラエティ番組を真剣な顔つきで見ていた。
バラエティは普段見ないけれど、最近流行りのお笑い芸人が司会役の、笑いありの面白い旅番組だった。
「心音」
声を掛けると心音は缶ビールを持ったまま振り返り、
「日本は何てステキな場所が多いの!今度はキョートに行きたいわ!」
「京都?」
実はあたしも行ったことがない。
今度……啓と行ってみたい。
心音は単に暇つぶしの為にテレビを見ていただけのようであたしが戻るとすぐにテレビを切った。
「ビール、飲む?」と心音はビールの缶を掲げる。
「いいえ、スコッチにするわ。ビールはさっき飲んできたし」
あたしはキッチンに向かいカウンターに置いたスコッチの瓶からロックグラスに液体を注いだ。
アイス(氷)も何も入れず、口を付けながら心音のソファに向かうと、心音は鼻の頭に皺を寄せくしゃりと笑った。
「昔から変わらない。あんたが怒ってるとき、その飲み方するの」
「怒ってる……と言うか、ちょっとトラブル発生」
「Trouble?(トラブル?)」
「問題のあたしたちの“計画”よ。このままだと失敗に終わる可能性は大」
「何でよ」と心音は不服そうに腕と脚を組み「あたしの練った作戦は完璧よ?」と言いたげだ。
あたしがスコッチをぐいと一飲みすると、熱い何かが喉を通り抜けた。
それをゆっくりと味わう暇もなく、あたしは心音に会社の事情をかいつまんで聞かせた。