Fahrenheit -華氏- Ⅱ
「何となく話は分かったけれど、でもこの後どうするの?」
心音はビールを飲んでのんびりと言い、脚を投げ出した。
「“計画”は動き出している。あたしはもう少し手を加えてまた啓に稟議を提出する。今度は一切の手を抜かない。
ただし、それとなく分かる“穴”を掘ってね。
稟議は間違いなくおじさまの元へ。あたしたちの計画は偽のオークションでヴァレンタインに大損をさせること。
けれど“偽”では無かったら―――?」
あたしはニヤリと笑いかけ心音の方を振り返ると、流石頭の回転が速い心音は指をパチンと鳴らした。
「偽と見せかけて“ホンモノ”にさせるのね」
「ええ、ヴァレンタインに今すぐの痛手を受けさせることは叶わないけれど、でも必ずあたしはあいつに立ち向かっていく」
マックス、
あんたは知ってる?
ライオンは雄ではなく雌が狩をすると言うことを。
その前に薄汚いドブネズミを葬らなければ。
「てことは急いでHPを作りなおさなきゃ」と心音はテーブルに置いた一台のPCの蓋を開いた。
仕事が早いのは流石ね。
「二村さんがあたしに攻撃してきても、それは偽ものではなくホンモノだったと知ったら?最後のカードは必ずあたしが握る」
「それをネタに罠にはめるってワケね」と心音はワクワクと楽しそうでキーボードの上で指を動かせる。
はぁ
今度はあたしがため息をつく番。
「明日からまた忙しくなりそう。まずは東星紡の小野田専務に謝らなきゃ」
「勝負服、着て行きなさいよ?」
「心音が買ってくれたものを?」あたしは肩を竦める。
実は心音はバレンティノのコートやバッグだけじゃなく、他にもいくつかプレゼントしてくれた。そのどれもが桁違いの高額のものだ。
「当たり前じゃない。計画したのはあたしとあんたよ」
心音は手をあげ、あたしたちは小さくハイタッチ。
「アメリカンウェストスターの本社の方にはあたしが当たるわ。謝って済む問題じゃないし、けどそれ以上の利益を提案できる材料をあたしはたくさん持ってるの♪これで波風を立てることなく、お互いウィンウィンじゃない?」
心音はトランプカードを両手で広げるジェスチャー。
ホント……心強い親友を持ったあたしは幸せ者ね。