Fahrenheit -華氏- Ⅱ
タオルケットに包まれた小さな……小さな我が子。
我が子に手を伸ばそうとしたけれど、あたしの手はユーリに届かなかった。
マックスが
ユーリを抱きあげ、そして遠くへ行ってしまう。
「No! Give me my baby back!(待って!あたしの子を返して!)』
返して!!!
「返してっ!」
あたしは自分自身の声で目覚めた。
あまりにも強烈な夢で、自分の寝言でガバっと起き上がった。
は……は…はぁ
肩を震わせ荒く浅く呼吸が乱れる。
「夢………?」
あたしはしばらくの間、それが夢か現実か分からなかった。
けれどあたしとマックスが別れたとき、ユーリは3歳。眠っている間に見た、マックスが連れ去ったのはまだ生まれたばかりの赤ん坊。
「夢―――…か」
やっと気付いてナイトテーブルに置いたデジタル時計を見ると、朝の4時半だった。朝と言うにはまだ早く、しかし夜更けと言うのには遅すぎる中途半端な時間帯。
ベッドを降り、カーテンを開き空を仰ぐと、そこには藍色でもない、ブルーでもない微妙な紫色のコントラストが印象的なきれいな空がまるで名の有る著名人が描いた絵画のように浮かび上がっていた。
小さな点々とする光は星だろう、その輝きはこれから迎える朝の光に寄ってその輝きを吸収している。月も透き通るような色で、しかしこちらはハッキリと分かる程、きれいな三日月を描いていた。
いつだったか、啓が送ってくれたメール。それはあたしたちがまだ深い関係じゃなかったとき。
お疲れさま☆
月がきれいだよ(*^_^*)
たった数行。
でもあたしはこの言葉で救われた。
あの時のあたしは何も考えず感情に任せて『寂しい』と言ってしまった。
寂しいのだ、きっと…
あの小さな赤ん坊の手はあたしの寂しさを現していたのだきっと。
あたしは―――“あの時”と同じ、衝動的に携帯のメモリに手を這わせていた。
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