Fahrenheit -華氏- Ⅱ


瑠華からの電話は嬉しかったけれど、


二度寝するか…と布団に入り込んだものの、一度覚醒してしまった脳は睡眠を促してくれなかった。


仕方なく起きだして、書斎になってる部屋に行って「仕事でもすっかぁ」とPCに向かうものの、「しまった…持ち出し禁止の案件だった…」と、ガクリ。


何てぇの?


ここ数日、瑠華と心音ちゃんと慌ただしくも暇をしない時間が多かったからな。


一人で居ると意外にやることがない。


料理でもするか、晩御飯の仕込みをしようとして冷蔵庫を除くもそこそこ食材は揃っているものの意欲が湧かん。最近、瑠華と食事することが多くなったからな…


瑠華の為に料理をするのは全然苦じゃないが、一人だけの為だと思うと何か面倒くせ…


結局、やる気がせず諦めた。そうすると益々暇を弄ぶことになった。


俺って暇人??


仕方なくシャワーを浴びて髪をセットしスーツに着替える。


まだ朝早いが、早朝に出勤してはいけない、と言う規則はない。


結局―――俺は会社に来ていた。


いつもより2時間近くも早い時間帯だったから道が空いていたってのもある。しかしながら遠くで地下鉄やメトロの動く音が聞こえてきて、この時間帯でも東京はすでに『起きて』いることを物語っていた。


瑠華と付き合い始めてから、彼女中心の生活になって、俺の中に変化はあったわけで。


ふわっと欠伸を漏らしながら、缶コーヒーと新聞を手にし、フロアに入ると当然ながら人の姿はない。だって朝の6時だもんな。会社入口の警備員さえ居ない状況だから当たり前と言えば当たり前か。


薄暗い室内はしん…と鎮まりかえっていた。


ま、当然社員は誰も居るわけではなく。


当たり前か……当たり前…


「あ、おはようございます」


自身のデスクで新聞を読んでいた瑠華を見て


「ぅをっ!」


また変な声が出た。


ビビっ………た!


念のためにきょろきょろと辺りを見渡し、誰もいないことを確認すると


「おはよ、瑠華」と俺はぎこちなく笑顔を浮かべた。


だって居るとは思わなかったんだもん。


寝起きに瑠華の声を聞けたし、会社で最初に会ったのも瑠華だ。


今日は良い一日になりそうだ!


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