Fahrenheit -華氏- Ⅱ

これは……瑠華に報告すべきか…


ブツブツ悩みながらフロアに戻ると


「お帰りなさい、早かったですね」とデスクのPCから顔を上げた瑠華を見て、今すぐ近づいて耳打ちしたかったが


「柏木さん、この書類ですが」と佐々木に話し掛けられ、断念。てかあからさまに瑠華に近づけん。


怪しまれるからな。


と言う分けでそこから一時間は何事もなく仕事をしていた。


TRRR


俺の内線電話の着信がなるまでは。


ナンバーディスプレイは1Fの『103』と表示されていた。


俺は訝しんで受話器に手を伸ばした。


1Fの『1』から始まるナンバーは受付からだ。そして受付からの電話だと90%の確率で来客の報せだ。


でも頭に入っているスケジュールの中で、今日の午後はアポが入って居ない。TUBAKIウエディングの香坂さんかな……と思ったけれど、受付嬢の女の子は戸惑った様子で、酷く早口で俺に説明してきた。彼女の話もあまり的を射ていない。とにかく来客は来客らしいが……


それでも一応


「はい、外資物流事業部、神流です」と受け取った。


「マーズフェイスのビトウさん?いや、知らないな…飛び込み?」


だけどビトウってごく最近どこかで耳にしたような…


『ビトウ』


が上手く変換できなくて


首を捻っていると、


バサバサッ


瑠華が持っていた書類を落とした。それほど大きな音じゃないのに、俺は瑠華らしからぬミス(?)のうちにはいるのかどうかは分からないけれど、ちょっと気になって受話器を耳に当てながら、彼女の方を見ると


瑠華は口を半開きにして目を開いていた。






「それ、



心音です」






え―――……!?心音ちゃん!?


何で!?




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