Fahrenheit -華氏- Ⅱ
やがて
「どこかでお会いしたことが?」
と、菅井さんの方からまさかの発言にびっくりした。
心音ちゃんが菅井さんを逆ナンパする可能性はあっても、その逆は全く考えられなったからだ。
「No.(いいえ)」心音ちゃんは短く即答。
「I'm sorry.You are not suited to my accessories.(生憎だけど、私のアクセサリーには向いてないわ)」
心音ちゃんは軽い口調で肩を竦めて目を上げる。
こ、心音ちゃん!!!
「え?」
菅井さんは心音ちゃんの早口の英語を理解できなかったのか、俺の方を見てきて
「あー…えっと、覚えがないと言っています」
俺は冷や汗を浮かべながら菅井さんに説明。
「……そうですか。でも…どこかでお見かけした気がするんですが」
と、菅井さんは真剣に考えている様子。
俺はもし心音ちゃんと菅井さんが顔見知りだったとしたら、それはそれで面倒なことになると思ったから早くこの話題を切りあげたくて
「もう帰るの?」と心音ちゃんに問いかけた。
「Yeah,Go home.(ええ、もう帰るわ)」
「じゃ、気を付けて」心音ちゃんを一刻も早く追い出したい俺は出口を手で促し、珍しく空気を読んだ心音ちゃんが軽く肩を竦めて、
「OK,Thanks.」と言って素直に出口に向かって行く。
「Take care.(気を付けてね)」
と返すと、「Thanks.」心音ちゃんはにこにこ笑って、俺の両肩に軽く手を置き
「See you later.(またね)」俺の頬に軽~くキス。「I'm glad I met you.(会えて良かった)」
まぁ心音ちゃんにとってはあまり意味のない行動だったに違いない。あったとしても、それは感謝の気持ちを表しているだけで、他意はない。……が、こうゆうアメリカでは当たり前のスキンシップに慣れていない日本人は戸惑う。
俺も、菅井さんも。