Fahrenheit -華氏- Ⅱ


ジョシュアは―――最後の最後まで心音と結婚したかったに違いない。


彼らはとても幸せそうだったから。


心音が刑務所に入れられたことも、ジョシュがジェシェカに折れてから解放されたらしい。


同じことを犯すつもりなら刑務所行きは免れない。


もちろん心音は犯罪などしていない。けれどでっちあげることなんて簡単だ。それぐらいやってのけるだろう、あの魔女は。ジョシュアもその辺のことを危惧していたに違いない。


それにしても意外だった―――……


駆け落ちまでして―――?


心音はまだジョシュのことを―――……


あたしの気持ちを読んだのか、心音は苦笑いを浮かべてくしゃりと前髪を握る。その行動で心音の横顔が手で完全に隠れて全く表情が見えない。


「ココ……」何と声を掛けていいか分からず彼女の華奢な肩にそっと手を置くと、彼女の肩は僅かに震えていた。


泣いているのかもしれない。




「認めるのも癪だけど、まだ



好きよ。




別れてから自暴自棄になって色んな男と遊んだし寝たけれど、いつも心は空っぽ。永遠にそこが満たされることがない、ってホントは気付いてる」


永遠に―――……


「だからね」


心音はぱっと顔を上げた。涙の痕は見られなかった。ぎこちないが笑みさえ浮かべて


「瑠華が今回の計画を持ちかけてきたとき、あたし少しでもジョシュ……と言うよりあの魔女に復讐できるんじゃないかって思ったんだ」再び脚を投げ出し、両腕を伸ばしソファに預ける。


心音―――……だからあんなに熱心にあたしに付き合ってくれたのね。


「ごめん……そうとは知らず、あたしの事情で計画変更にしちゃって…」


思わず俯くと


「なぁに謝ってんのよ」と心音はあたしの髪をぐしゃぐしゃとまさぐった。


「あたしは瑠華の復讐に便乗しただけ。あんたがあの話を持ちかけてこなかったら、たぶん一生考えてなかった。考えるもイヤだったしね。


それに復讐の方法は何も一つだけじゃない。何て言ったってあたしは…」


「ネット会の神だから?」あたしがわざと明るく聞くと


「Yeah!」と心音がくしゃりと笑った。


「ちょっと遠回りになるだろうけど、あたしとあんたが手を組めば最強よ?二人であの巨大な一族をぶっ潰そうじゃない」


心音―――……


でも潰したらジョシュへの気持ちも絶ちきれるの?


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