Fahrenheit -華氏- Ⅱ

復讐と言ったけれど、気持ちだけはどうにもならない。


そんなことを考えていると



「それにさ、昨日も言ったけど、あたしはジョシュがまだ好きだけど親友のことも大好きだから、だから失いたくないの。


恋を失って友情も失ったら?今度あたしに何が残る?


瑠華は全て失った、あんたがこれから失うこと阻止したいって言ったけど、あれ自分にも向けた言葉だから」


心音はゆっくりとシャンパンを飲み、きちんと飲み干すと


「瑠華……」心音は俯いたまま小さく呟いた。その横顔はほんのり色づいていた。酔っぱらっている風には見えないし、そもそも心音はこれぐらいで酔わない。


「ん?」と首を傾けると



「今日だけのお願い、聞いてくれる?」


「Of course.まぁ限度もあるけど」あたしが微苦笑を浮かべると


「今日、一緒に寝てくれない?」


心音はゆっくりと顔を上げ、今にも泣きそうな瞳を潤ませてあたしを見ていた。


心音は……あたしより身長も高いし大人びて見える。だからあたしはいつも心音の妹扱いされてたけど、今日ばかりは―――心音がまるであたしよりうんと小さな子供のように見えた。


「いいわよ」


あたしは心音にそっと抱き付くと彼女の肩を抱きしめた。


温かくて柔らかい体温。心音の手もあたしの背中に回され、きゅっとシャツを握られる。




この日、あたしたちはあたしの寝室で抱き合って眠った。


どれぐらいぶりかしらね。


こんな風に眠るのって。


改めて思い出すと


Elementary School(アメリカで言う小学校のようなもの)の時以来だった。


あたしの腕の中、心音は心地良さそうに寝息を立てている。


その寝顔は無邪気であどけない。時折あたしの存在を確認するようにキュっとあたしのシャツを握ってくる。まるで子供みたいで愛おしい。あたしはその手に自分の手を重ねた。


いつもは守ってもらってるけれど


今日ばかりは、




あたしが守るよ、心音。



だから安心しておやすみなさい。


もう魔女はいない。


いたとしても、今度こそ―――ぶっ潰す。あたしたちを怒らせたらどうなるか、見てなさい?


女の底力、見せてやるわ。






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