Fahrenheit -華氏- Ⅱ

都営バスが西麻布から俺の住む高輪まで出ている筈だったが、生憎だが9時台が終バスだった。


仕方なしに、タクシーで自宅に帰ることに。時間にして10分足らずだ。


マンションに帰り着いて、スーツの上着を脱ぐと俺はシャワーを浴びる前に瑠華に電話をした。


タクシーの乗っている間、散々悩んだ。


瑠華に電話してもいいか、どうか……


え??そんなに悩むことかって!!?←読者の皆様はそう思われるかもしれませんが


だって時間的にもう12時近くだし、心音ちゃんだって居るだろうし、寝てるかなー……とか、心音ちゃんとのガールズナイトを邪魔して怒られないかなー……とか、色々考えちゃうんですよ!


とにかく俺はまるで鬼の形相で携帯と睨めっこ。


タクシードライバーの割と気さくな運ちゃんは、俺の鬼気迫る気迫に最初色々「何かあったんですか?」と聞いてきたが、それに何も答えることができないぐらい俺は悩んでいた。と言うか運ちゃんの問いかけすら耳に入ってなかった。


やがて目的地の自宅に着いて、


「お兄さん、着きましたよー……」と遠慮がちに聞いてきた運ちゃんに


「決めた!」俺は携帯を握りしめた。


「な……何をですか……?」と、運ちゃんはちょっと警戒したように顎を引き


「俺!彼女に電話します!!彼女って言ってもめちゃくちゃ好きな恋人のことで!」


と、今までずっと携帯を睨んだまま推し黙っていた俺が、聞かれてもいないことをいきなり喋り出したから、運ちゃんそれはびっくり。


「そ……そうですか…喧嘩でもされたんですか?」と気の良い運ちゃん。


「いえ。電話を掛けるには非常識な時間かと思っていたので」と手を広げてキッパリ言うと


「へ……へぇ…お兄さんイケイケに見えるけど、案外真面目なんだねぇ……」


「イケイケ……だったんスよ。前までは……それこそ真夜中に女を呼び出したりとかフツーだったんですけどね、彼女と出会ってから俺、生まれ変わったって言うか」


「そ、そう?そりゃ良かったですね…運命の女神ですね」


運ちゃん、ここで面倒そうにそわそわとメーターと俺とを目配せ。『面倒くさいの乗せちゃったなー』と内心の言葉が聞こえてきそうだったが、俺の語りは止まらない。


「そう!まさしく女神!!あんなデキた女この先一生出逢えない!!って思ってるんス!」


「そうですか、お若いのにそりゃ良かった。で、お支払は…」


メーターを見ると¥1,480で、財布の中を覗くとさっき細かいの出して今万札しかねぇ。


「一括で」


と出したクレジットカードを、運ちゃんは安心したように受け取ってくれた。クレジットカードを手にして運ちゃん、それを見て目を瞠る。




「プ……プラチナカードぉ!?」



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