Fahrenheit -華氏- Ⅱ
俺としたことが……タクシーの運ちゃんが思いのほか聞き上手だったから(←いや、一方的に啓人が喋ってただけ、ドライバーさんは引いてましたヨ)話し込んじまって、10分のタイムロスだ。
時計の秒針はいよいよ12の文字盤を差そうとしていた。
いかん!!
慌てて瑠華に電話をした。
TRRR…
俺の女神は、何と!1コールで出てくれた!
『はい、柏木です』
てか……これって……
仕事の延長線??
基本会社の電話は外線でも内線でも1コールで取るのが何となくのルールだし、一番下っ端の佐々木は特にそれを厳重に守っている。瑠華も手が空いてるときはそうしているし…
違うのだよ、瑠華サン。これは業務外なのデス。
ごほん
俺は咳払いを一つして
「お……」
起きてた?とたった一言が言い出せない俺。毎日会社で顏を合わせてるし、プライベートで毎日メール(←ほとんど俺発信だケド)何なら彼女のマンションに泊まりに行ったり、俺の部屋に泊まりに来てもらってる関係だってのに!
何故!電話だとこんなに緊張するのだろう。
『お?』
瑠華が『お』に続く言葉を考えているようだった。瑠華は最近俺の扱いにも慣れたのか、俺が挙動不審な言動をしてもそれ程気にすることはなくなった。←いいことなの??
やがて出てきた言葉は
「お疲れ様でございます!!」
『………』
何やってンの?俺。