Fahrenheit -華氏- Ⅱ
とにかく、心音ちゃんのおかげでそのナンパ野郎は強烈なしっぺ返しを食らって、と言うかその業界で一生食っていけない程の痛手を負ったわけだけだから、ほとんど人生終わったものみたいだけど。
バカだな、そんなくだらないことで人生を棒に振るなんて…
と考えたが、改めて心音ちゃんを敵に回したくないとゾッとした。
だけど……俺、こんなこと話したくて電話したわけじゃないんだよな。
まぁ??瑠華が、普段遠く離れた親友と何してたのかはちょーーーーーっとばかり気になったが。(←ホントはかなり気になってました)
「さっきまで菅井さんと……飲んでてさー」
俺は本来話したかったことをさりげなく、切り出した。
『ええ、知っています。だって報告してくださったじゃないですか』
“さりげなさ”全然通じなかった!!
やっぱ瑠華には俺の今までのテクは通じないか……
コホン
俺はわざとらしく咳払いをして菅井さんと飲んだときの会話を軽く聞かせた。
流石に真咲が妊娠してる、と言う言葉を出すときは緊張したが。
『え!?真咲さんが…?』
瑠華の反応も俺の緊張を裏切らないものだった。彼女らしからぬ動揺だ。
「そう、間違いなく菅井さんとの子だろうけど、だから……菅井さんが言うにはあいつ……真咲はこれから数か月後に産休に入るワケじゃん?
あそこはすっげぇ大企業ってわけじゃないから、産休や育休取った後に必ず今の席を約束されてるか、と言われると微妙らしい。
だから休む前にデカい案件取って、育休後の席を確保したいんだろう…って。
だからって俺を強請る真似するなよな!って感じだけど」
口から思わず深いため息が漏れ
『でもこれで、啓に近づいた理由がハッキリしたわけですね。
啓の言うように……確かに真咲さんの取った行動は良くないかもしれません。プライベートを……しかも過去の関係を吹聴する、と言う脅しはあまり賛同できかねますが
でも、それ程までに
仕事に掛ける情熱が強いと言うことなんですね』
まぁ、そうだよな……