Fahrenheit -華氏- Ⅱ
聞き間違い―――……?
もう一度聞きたくてわざと「え?」と返したけれど
『おやすみなさい』
とそっけなく電話は切られてしまった。
相変わらずマイペースなのね、瑠華ちゃんは……クスン。
なんて落ち込んでるワケない。
『幸せ』
なんて言葉聞いてしまって、落ちかけていた瞼はパッチリ!
し・あ・わ・せ
何ていい響き!!!
俺、誰かにそんなこと言われたこと初めてだから。
ギャー!!
ソファに転がってるクッションに顔を埋め一人ゴロゴロ。
してること数分。
何やってンの俺、と突然我に返ったが、しかしこのキュンキュン余韻は早々冷めず、誰かにこのあっつい気持ちを伝えたくて
時間を顧みず
「もっし~♪お・れ」
と、さっきあんだけ瑠華には躊躇したってのに、ほとんど何も考えず裕二に電話を掛けていた。
しかしこちらは
『……んだよ、こんな時間に。寝るところだったんだよ』と不機嫌そのものの裕二。
「そーか、そーか、わりぃな」とへらへら。全然悪いと思ってない。
『お前やたらとテンション高いな、変なクスリでもやってんんじゃないだろうな』と裕二は声を低める。
「んなわけないだろが!」思わず素で怒って
「それがさ~、瑠華が俺と出逢えて幸せだって言ってくれて~」
とまるで女子高生みたいなノリで裕二に報告すると
『あ、そ。良かったな。俺は寝るところだ。じゃな』とあっさり電話を切られそうになった。
「何だよ、お前は言われたことないんかよ綾子に」唇を尖らせると
『………』電話の向こうの裕二は沈黙した。
これは…
「言われたことないんだな」憐れ裕二…
それから裕二の方も目が覚めたのか
『そーいや、俺綾子から『好き』とか言われたことないんだけど…俺は綾子に『愛してる』てぶちかましたのに』
と何故か裕二の恋愛相談にすり替わった。