Fahrenheit -華氏- Ⅱ


これには俺も驚いた。瑠華だってそうに違いない。


「大丈夫ですか!」


声に緊張が走っている。


「……だ、大丈夫です……く、薬…」瑞野さんは床に転がったバッグを手繰り寄せようとして、瑠華がそれを手伝った。


「薬ですか?探しても?」と聞くと


瑞野さんは無言で大きく頷いた。


「ポ…ポーチの中に」と瑞野さんの言葉を聞き、瑠華が「失礼しますね」と一言言いおき、化粧ポーチの中から錠剤のパッケージを探しだした。


瑠華は自分のイヴサンローランのバッグからペットボトルの水を取り出し「これで」と瑞野さんに薬を飲ませた。


俺は…もちろん二村もどうしていいか分からずその様子を呆然と見守るしかできない。


それから数分、瑞野さんはまるで過呼吸のように心臓を押さえながら息を荒くしていたが


「病院に行きましょう」と瑠華の提案にゆるゆると首を横に振った。


「大丈夫……です」と瑞野さんは弱々しく何とか答えた。


「では医務室に」と瑠華が言い「私が付き添います。このまま帰るのは危険です」との説得に瑞野さんは瑠華の顔を見つめたまま眉を寄せて何とか頷き、瑠華に支えられるようにして立ち上がり、


「部長、すみません。彼女を医務室に連れていきます」と小さく頭を下げてきて


「う……うん」と情けなく答えることしかできない。


エレベーターの箱から出る際、




「喧嘩は外でやってください。ここは会社です。しかも女性を巻き込んで。あなた方は最低です」




瑠華が冷たく言って俺と二村を睨み、


ちょっ!ちょっと待って!喧嘩を吹っかけてきたのは二村でっ!!!


てか俺悪者~~~!!!!?


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