Fahrenheit -華氏- Ⅱ
ハンバーグ定食は、まぁそこそこに美味しかった。
瑠華のナポリタンも少し貰ったが、結構うまかった。今度から社食じゃなくこっち利用でもいいかな、とか思ったけれど12時を過ぎるとあっという間に狭い店内は客で埋まってしまい、賑やか…と言いたいがちょっと騒がしいのが難だ。
どこで何の会話を聞かれているか分からないから、食事の最中も、そして食後も俺たちは当たり障りのない仕事の会話を交わした。
俺たちが実は恋人同士と言うことを気付かれたくないことを意識していたが、しかし周りの社員たちは俺たちの会話なんて一向に気にならない様子でそれぞれ食事や会話を楽しんでいた。
俺が過剰になり過ぎなのか??
瑠華はナポリタンを三分の一程まで食べると
「残りは部長に差し上げます」と言って手渡してきた。
「え?まぁまだ食えるけど柏木さんそれで足りるの?」
元々少食ではあったが、ナポリタンは決して多い量ではなかった。食べきれると思ってたけれど。それとも食欲ないのかな…と心配していると
「夕飯に餃子を食べる予定がありますので。今お腹いっぱい食べてしまうと“おいしい”餃子が食べられなくなってしまうので」
瑠華は微笑んで、俺の心臓がまたもキュンっ!と強く打った。
それは!瑠華は俺の作った餃子を楽しみにしてくれてるってことだよな!
ゲンキンな俺はいつものペースを戻してガツガツとハンバーグとナポリタンを食った。
……腹いっぱいで、今度は眠気と闘う気になりそうだが。
と言う分けで二人で昼食を済ませ、フロアに戻ると
「お帰りなさい」と佐々木が思った以上に平和そうに迎えてくれて、こっちも何もトラブルがなかったことを知ってほっとした。
「悪りぃな、俺、今日柏木さんと先に休憩に入った。今からお前も休憩取れよ」と言うと
「え!何でそのこと早く言ってくれないんですか!」と佐々木はさっきの平和そーな表情から一変目を吊り上げた。
え…?
怒られるポイントが分からず目をまばたいていると
「柏木さんと唯一二人で会話を楽しめる貴重な時間を…」と佐々木はブツブツ。
なるほど、そういうことか。オアシスタイムを奪って悪いな佐々木。