Fahrenheit -華氏- Ⅱ
よっぽど瑠華と休憩に入りたかったのかまだツブツブ言っている佐々木が昼休憩に行くと入れ替わりに綾子がフロアに顔を覗かせた。
「お疲れ様」
「おう」
「お疲れ様です」
綾子は手ぶらだった。特にこの部署に何か用事があると言った感じには見えない。
「柏木さん、さっきはありがとうね」綾子は片目を閉じて目の前で手を合わせる。
“さっき”とはあれだな、瑞野さんの件だな。
つまり綾子はそれだけを言うためにわざわざここに来たと言うわけか。
瑠華がどこまで綾子に話したのか分からないが
「てか綾子、親父に言っとけよ、あれじゃいつかパワハラで訴えらるぞ、って。
大体な~イマドキ流行らないんだよ、ああゆうの。コンプライアンスまる無視じゃねぇか。
明日、瑞野さんが来なかったらどうするんだよ」
「大丈夫よ、はじめてのことじゃないし。私だって最初は結構あったわ。会長の『帰れ』て言うのはね、あそこまで怒った後、そのまま顔突き合わせてると彼女がキマヅイでしょ?それでまたミスしたらもっと最悪。
彼女の為でもあるし、一日帰ってリセットできる人間が、あそこでは必要とされてるわけ。
来なかったら秘書としては通用しないわ」
なるほどー……
すっげぇ戦場だな。