Fahrenheit -華氏- Ⅱ


スキップでもしたい気分で(実際にはしなかったけど)ルンルン気分で俺も喫煙ルームから出ようとしたところ……


んゲ


出たな!陰険村木!!


せっかくのラブラブ甘~い余韻が秒殺だ。


村木は携帯で何やら会話を繰り出しながらこちらに歩いてくる。


俺と瑠華が一緒に居られた場面を見られたわけではないが、こいつは何を考えてるのか読めないからな。要注意だ。


俺は軽く会釈だけして極力目線を合わせずヤツとすれ違うときだった。


「だからその件は延期だと言ったろ!こっちは今一番大変な時なんだ。明日なんて時間が作れるわけないだろう!」


と、何やら電話の相手と揉めてるっぽい。俺が視界に入っているのかどうかも微妙な感じで、苛々した面持ちで喫煙ルームの扉を開けようとしている。


ま、こいつが揉めてようと、楽しそうだろうと俺には関係がないが。


遠ざかる際に聞こえた「銀座で」とか「料亭」と言う言葉をちらりと耳に入れてしまって思わず足を止めた。




明日――――……?




「じゃぁな」村木はやや強引と呼べる仕草で無理やり電話を切ったようで、村木の動向を気にするように振り返った俺と、村木との間で今度こそ視線がバッチリと合った。


別に……聞き耳立ててるつもりもなかったし、コソコソしてるわけでもないが。


何となくキマヅイ。


大体、裏でコソコソ動くのは村木の専売特許じゃないか。


裏でコソコソ……


村木、何を考えてる―――


明日何があるって言うんだ。


そう思うと、見たくもないのに何故だかヤツから視線を逸らせなかった。向こうも同じではっきりと視線が合ったっと言うのに声を掛けるわけでもなく、かといって視線を逸らそうともせず。妙な雰囲気の中まるで睨めっこのように視線を合わせていた俺たち。


やがてその沈黙を押し破ったのは村木の方だった。





「神流部長。一つお尋ねしたいことが」




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