Fahrenheit -華氏- Ⅱ
俺は自身のブースに戻り、
ガタッ!
派手に音を鳴らしてデスクに突っ伏した。
「ど、どーしたんですか!」と佐々木が声をあげる。
「いや……ちょっと天敵の攻撃のダメージが…」
「天敵?」と瑠華が眉を潜め、ちらりとパーテーションから顔を出し隣の部署を覗き見る。
俺もそれに倣った。二村は真面目にPCに向かっていて、瑠華の視線の先がヤツに向かっていることに気付いた俺は彼女にだけ分かる様に軽く頭を横に振った。
俺のげっそりとした様子を訝しんでいた瑠華が何かを察したのか
「村木さんに何か言われたのですか」と鋭い突っ込み。
「いや…言われたとかじゃないけど……アイツ理解不能…」
顔を覆ってさめざめと泣き真似をしていると、大した問題じゃないと察したのか、ダメージ中の俺に容赦なく大判の封筒を手渡してきた。
「部長、これお願いしていた件の書類です。宜しくお願いします」
その場で中身を確認すると“委任状”と書かれた書類が出てきて、ダメージからすぐ回復すると「了解~」と軽く言ってそれをビジネスバッグに仕舞い入れた。
やっぱ瑠華はいいな。
可愛いし、仕事早いし、美人だし、良い香りするし、冷たいし、可愛いし(←何気に可愛いを二回言いました。と言うか冷たいはこの場合宜しくないのでは??)
と、まぁ“委任状”を受け取り予定の時間になると俺はホワイトボードに『神流:(取引先の業者の)会社名打ち合わせ→外回り』と書きこんで
「じゃ、行ってくるわ。留守番宜しく~」と言って手をひらひら。
「「行ってらっしゃい」」と二人に見送られ、俺は廊下に出た。
必要な書類やファイル、あとは瑠華から預かった“委任状”をちゃんと入れたかどうか鞄の中を確認していると、女子トイレからシロアリ緑川が出てくるところだった。