Fahrenheit -華氏- Ⅱ


「いらっしゃーい」


俺が出迎えると


「お邪魔します」と瑠華は相変わらず律儀で丁寧で、その反対で


「Wow!いい匂い!」と玄関先で心音ちゃんは鼻をくんくんさせている。これじゃどっちが俺の彼女かわかりゃしねぇ。


リビングに彼女らを迎え入れ、瑠華はすぐにいかにも高級そうな紙袋を俺に手渡してきた。


「お土産です。中身は紹興酒です。餃子には合うかと」


それは立派な木箱に入ったもので、開けたら上品なえんじ色のシルク素材の土台に白い陶磁器が埋まっていて、その表面には『古越龍山』と書いてあった。


いやいや…


俺、中国圏めっちゃテリトリー内よ?つまりこれがどれだけ高価なのかすぐにわかってしまった。


しかもこれ旨いし。


勿体なさすぎて飲めないぜ。


なんて酒に涎垂らしてる場合じゃない、俺は早速裕二を心音ちゃんに紹介した。裕二は緊張しているのかぎこちなくも名刺を心音ちゃんに差し出し


「は、はじめまして。麻野 裕二です」


「Oh!あなたは噂のユージ♪I’m happy glad to meet you.(会えて嬉しいわ)」と裕二に握手を求める。心音ちゃんはちょっとこちらを振り返り「なかなかNice guyじゃない♪」とひそっ。


「誘惑しないでよ」と瑠華は小声で答えて腕を組み目を吊り上げる。


裕二は素直に握手をして、こっちもちらりとこちらを振り返り


「な、何か想像してたのと違う。ふつーにイイ女じゃねぇか」とボソリ。


イイ女……ねぇ。


「お前が魔女とか言うからどんなんかと思ってたけど」


まぁそりゃそのうち分かる。

< 755 / 778 >

この作品をシェア

pagetop