Fahrenheit -華氏- Ⅱ
綾子がビールの二本目を開ける頃
「俺トイレ」と言って裕二がトイレに向かっていった。
「で?」
俺は綾子の向かい側で腕を組み目を上げた。
「何?」綾子が眉間に皺を寄せる。
「お前がそんなクダラナイことで一々苛々するタマじゃないだろ。ホントは何があったんだよ」
綾子は俺の作った餃子を口に頬張りながら
「この餃子、ホントに美味しいわ。こっちにこれば良かった」と冷めた視線で餃子をまじまじ。
「あの子たちね、裕二のことバカにしたのよ」
綾子は勢いよくビールを飲み、吐き捨てるように言った。
何でそうなったのか軽くいきさつを聞かされた。
女二人が結婚や“ステキな”彼氏が居ると聞かされ、当然その話題は綾子にも向けられるわけで。
綾子は普通に付き合ってる彼氏が居るって言ったらしい。
自慢もしてなけりゃ、バカにもしてない。
けれど女共はその彼氏…裕二のことだけど、裕二に何を貰った?とか裕二とどこに食事に行く?とかの質問攻めに合ったそうだ。
「なれそめまで聞いてきて、同期って言ったら『手頃な所で手を打ったね、まぁ結婚に焦る気持ちは分かるけど』とか言ってきて!」
ガンっ!
綾子は缶ビールをローテーブルに叩き付ける。
こ、怖ぇえよ綾子…
「はぁ!?手頃なとこ?そんなつもりで裕二と付き合ってるわけじゃないわよ!逆に近すぎて悩んだんだからね、あたしは!」(Fahrenheit -華氏- 参照)
ま、まぁそうだったネ。裕二の押しに折れたのは綾子だったからな。
「あんたたち!裕二がどれだけイイ男か知らないから言いたい放題だけど!てかあんたたちの婚約者や彼氏よりも裕二の方が100倍…ううん、1000倍イイ男だから!
確かにあたしたちは会うときはどっかの居酒屋や裕二やあたしの部屋よ、でもお互い忙しいし仕方ないじゃないのよ!てか一緒の空間に居て一緒に笑い合えればそれが幸せじゃない!
それにどんな高価なもの貰ってもそれが愛情の重み!?
バカじゃない!好きな男から貰ったものだったら道端に落ちてる石ころだってダイヤになるわよ!
あたしのことを何と言ってもいい。
でも裕二のことそんな風に言うのは許せない」
綾子の怒鳴り声に俺は目をまばたいた。
昨日の夜裕二は綾子から『好き』とか聞いたことない、って言ってけど、この一言がそれ以上の愛を語っている。