Fahrenheit -華氏- Ⅱ



てか何で俺が陰険村木のこと考えなきゃならんの!


あれだな……メンタルクリニックで川田さんに会ってからだ。あいつの意外な一面を知ったから。


いや、油断するな啓人!あいつは何と言っても『陰険村木』だからな。


――――

――


と言う分けで一日がはじまった。


一日中、俺は魔王二村より陰険村木の動向が気になってそっちばかり気にしていた。


それはもう、妖しいぐらい。


俺たちの関係を知らない人が見たら俺が熱烈村木に片思いしてるみてぇにな。


てか“俺たちの関係”って言っちゃってる時点で妖しさ満載じゃねぇか!!


と自分ツッコミをしながら、時間はじりじりと過ぎて行く。


俺だってブースが違うしパーテーションと言う壁があるからそこまで調べられないけど、だからこうやって意味もなくコピーを取りに来ては村木の様子を監視する羽目になってるワケ。(普通なら佐々木に頼む)


渦中の村木と言えば目立った動きは見せず、変わらず部下を怒鳴りつけてガミガミ、変わらず不愛想で、変わらず陰険だ。つまり通常通りだ、と言うこと。


昼休憩になって、早番の佐々木と瑠華が休憩に入った。村木は12時ぴったりに席を外し、どこかへ食事に行ったようだ。すでに尾行をしたい気持ちに駆られたが我慢、我慢。


“本番”(?)は夜だからな。


早番の瑠華は15分程早く戻ってきた。相変わらず仕事熱心だな、と思っていたが、彼女は席に着くなり文庫本をバッグから取り出し、それをペラペラとめくって真剣に読んでいた。


何を読んでいるのだろう。


気になってちらりと盗み見ると


いかにも洋画の……それもファンタジー映画に出てきそうなこげ茶の表紙で金の文字で


Sir Arthur Ignatius Conan Doyle


と書かれていた。


しかし、ちら見したページは目がチカチカするぐらい細かい英字がギッチリ詰まっている。



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