Fahrenheit -華氏- Ⅱ
瑠華が到着したのをキッチリ見計らって俺が勝手に注文した瓶ビールが運ばれてきた。ビールを運んでくれた仲居っぽい女は案内嬢と同じ色合いで同じ柄の着物姿で、案内嬢より少し年上に見えた。
彼女がビールを出す際、テーブルに置かれた瑠華のデジカメを見てほんの少し眉をしかめた。
しまった。デジカメを持ってきた瑠華の機転は良いが、言い訳を用意していなかった。
だけど
「私たち、フリーのフードライターなんです。と言っても大手ではなく地方のローカル誌ですけれど。
あらやだ。私ったら今日名刺を忘れてしまって。うっかりしてました。
今回お料理だけでも撮らせていただいても宜しいでしょうか。掲載する際には改めてご報告に伺います」
と、瑠華はスラスラ。
「あら、そうでしたの。構いませんよ?ごゆっくりどうぞ」
と、仲居の方もすっかり瑠華の嘘を信じたようで、あれこれ突っ込まれずすんなり立ち去って行った。
「嘘も方便、と言いますでしょ?」
瑠華がまるで悪戯っ子のように小さく笑い
激しく誰かさんに被るぜ。と俺はあっぱれ!ともう感心の域。
誰かさんと言うのはクロキリ……もとい、黒桐島のことだけどな。
黒霧(クロキリ)とそんなに接点ない筈なのに何で!何でヤツに染まってンだよ!!