Fahrenheit -華氏- Ⅱ


なるほど。あくまで瑞野さんとの関係は否定するのか。


二村の出方を見るつもりでとりあえず当たり障りのない言葉で言う。


「あの暴れ馬の扱いは大変だろう。しっかり手綱を引いておくことだな」


と指さすと


「女の子を動物に例えるのは失礼ですよ~」


と二村はちょっと唇を尖らせた。


お前さっき女の子を食べ物に例えたよな、どの口が言う。と思ったが口に出さなかった。


単なる無駄話だ。


無駄話…



「でも、葉月が馬なら




柏木さんは



メスライオンだ」




俺は目を開いて二村を見た。二村はまた声のトーンを低めてやはり意味深にニヤリと笑っている。余裕さら感じる。


「それこそ失礼だろうが」


こいつが何を言いたいのか分からない。だが、これは二村の“罠”だと言うことには気付く。


こいつは俺と瑠華が付き合っていることを知らない―――筈。





「分かってないですね~部長は。


女って生き物は笑顔と言葉に、したたかさと







嘘と秘密がある」



今度こそ我慢ができなくて



「何が言いたい」俺が低く問うと


「別に?ただ、今風向きが変わりつつあるなぁ、って。俺にとって不利な状況。


だけど俺は最強の“カード”を手に入れた」


“最強のカード”それが何なのか皆目見当もつかない。もしかして瑠華の元旦那がヴァレンタイン財団の一族ってことを嗅ぎつけたのか?


とも一瞬思ったが、それが“最強の”カードに値するレベルではない。知られたことで痛手を受けることはない、と瑠華は言い切っていたから。


だけど





「メスライオンに食われる前に
   


先手を打つ必要があるなぁって思って。





知ってました?ライオンはメスが狩をするって」




俺は目を開いたまま二村を見下ろした。


今度こそ『何が言いたい』と問うことすらできなかった。





二村は―――俺の知らない“何か”のカードを握っている。





何故か分からないが、これを『直感』と言うのならまさにそうだ。


嘘と秘密―――


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