Fahrenheit -華氏- Ⅱ
「でも、これで相手があんたをつついてくるのは間違いないわね」
心音がニヤリと笑い、あたしも同じだけの笑顔で再びシャンパングラスを鳴らした。
「何故、その稟議を二村さんが知っているのか、偽の偽、
つまりホンモノのオークションであたしに落ち度が無いと分かったときの
その顔が見てみたいものだわ」
「でもこのやり口からして相手は相当、周到よ?カードをいつ切ってくるかであんたの出方も変わってくる。
Beware.(気を付けて)」
当然、気を付けるわ。
彼がどんなカードをあたしに向けても太刀打ちするシミレーションは出来ている。
どんなカードで斬りこんできても
あたしは
負けない
そんなときだった
~♪
あたしの携帯にムーンリバーのメロディが流れてきて、二人して携帯を見てディスプレイに『啓』の文字を見て、また二人して顔を合わせた。
なんだろう。またいつものくだらない……いえ失礼…大した内容のない世間話だろうか。
でもここ最近啓はそう言う電話を控えている。心音が居るってことに気を使ってる感じはあった。
緊急の用かも。
携帯を開いて耳に当てる。
「もしもし?」
『あ、瑠華?俺』
「どうかされましたか?」あたしがシャンパングラスをテーブルに置きながら聞くと
『いや……あの…』
啓は言葉を濁した。
どうやら良くない話みたいだ。
思わず心音を見やる。心音はシャンパングラスに口をつけながら肩を軽くすくめただけだった。