Fahrenheit -華氏- Ⅱ
『おめぇ犯罪に巻き込まれてるんじゃないか?』
オヤジが更に声を低めて聞いてきて、
『ちらっと聞こえたがおめぇのおやっさんの話も出てきたよな』
「まぁ……ね。でも犯罪絡みじゃないから安心してよ。会社のトラブルだ。ちょっとした、ね」
『アホかおめぇは。ちょっとしたことならこんな周りくでぇことしねぇだろうが』
オヤジに説教を食らって俺は小さくため息。当たってるだけに何も言い返せない。
「巻き込んでごめん」
と言うのが精一杯。
俯いて額に手を当て、よじれた紙の上にポタリと一粒の雫が落ちた。
『……おめぇ…大丈夫か?』
オヤジの心配した声が聞こえてきて、
「大丈夫だって。大丈夫……」
―――じゃない。
書類に落ちた雫の玉はみるみるうちに書類に広がって灰色に染まっていった。
鼻の奥でツンとした嫌な痛みを感じて思わず鼻を啜った。
そっか……俺
泣いてるんだ。
オヤジもそれを察したのだろう。
『今日、飲みにくるか?奢ってやるよ』
といつになく優しい声音だったが
「こぇえよ、優しいあんたの声」
とわざとふざけて言うと
『俺ぁいつだって優しいんだよ』と向こうも俺の調子に合わせてふざけてくる。
『まぁ飲みに来たくなったらいつでも来いよ。録音テープは俺がしっかり金庫に保管しとくからさ』
「サンキュ……ごめんな、迷惑かけて」
『てやんでぃ、誰が迷惑と思ってやがる。迷惑だったらさっさと電話切っちまうわ。俺ぁ短気だからな』
「知ってる」俺はちょっと笑った。
『謝るんじゃねぇよ。誰にも―――
俺はお前と言う人間をよぉく知ってる。女にゃだらしないが、きちんと筋が通ってる』
だから
謝るな