Fahrenheit -華氏- Ⅱ


今何してるんだろう―――…


誰かに対してそんな風に思ったのなんて、随分久しぶりの感覚だった。


今日一日は彼からメールもなければ電話もない。


こっちからしてもいいのか…


う~ん…


携帯と睨めっこして、腕を組んでいると突然メールの着メロが鳴った。


メール受信:啓


となっていて慌てて開く。


今は夜の21時半。日本では11時半ってとこね。


本文がなくて、添付ファイルだけがくっついている。


なんだろう…


そう思って添付ファイルを開くと、動画だった。


遠くから撮影してるのだろう。しかも、かなり広い…野球場みたいなところだ。


そう言えば、社会人野球を休日にしてるとか、前言っていたっけ…



『啓人、次外したら降ろすぞ~』

『彼女への想いを球にぶつけろ~』



と賑やかな掛け声が聞こえてくる。


啓……?


バッターボックスに立ってバットを振っているのは、



啓だった。



それが何球目なのか分からないけれど、ボールが啓の手元に飛んできて、啓は綺麗なフォームでバットを振った。


バットの先にボールが当たり、綺麗な弧を描いてボールが空に吸い込まれていく。



綺麗なホームランに、あたしは思わず口を押さえた。





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