シフォンケーキ
綾人の「シフォンケーキ食べたい」はあくまで独り言で、周囲への催促ではないのだ。

独り言を無意識に零すほどにシフォンケーキが食べたくなった綾人は、学校から帰るなり早速俺に強請ってシフォンケーキを堪能した。



俺の両親は共働きで、割と早い頃から家事を肩代わりしてきた。

なので俺は料理もそこそこ出来る。




だが、それとは対象的に綾人ははっきり言って何も出来ない。

否、やろうとすらしない。

怠け者の王様だ。



幼少時代から、ぐーたら綾人を見るに見かねて俺が世話をするというのが二人のスタンス。


家に来た当時は当然家事も分担してもらおうと思っていたのだが、結局ぐーたら綾人に堪えられず俺が一切合財を取り仕切る羽目になっている。




俺って器用貧乏・・・。




それに対し、人に取り入ることにだけは長けた綾人は笑顔一つで自分の欲求を充足してやがる。




俺はオマエの従者じゃねぇぞ!




今回のシフォンケーキも然り。

どうせ誰かがくれるものならば、俺が作るまでもないじゃねぇか!




ああ。

そこまで分かっていながらも綾人のオネダリに負けて世話を焼く俺が一番甘いのだけど。

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