シフォンケーキ
「で、それ、誰から預かったの?俺の知ってる子かな。」
俺はちょっと躊躇った挙句「安藤紫穂」と答えた。
「アンドウシホ。アンドウシホ・・・・どこのアンドウシホさん?」
「クラスメートだろーが。」
「・・・・え?ああ。あのアンドウシホさんね。」
綾人は理解に至って晴れやかな顔でぽくっと手を打った。
って、オマエの知り合いに一体どんだけアンドウシホが居るんだよ。
怪訝な顔をした俺を、綾人が図りかねる笑みで探るように見る。
「ふうん?アズが全部食べちゃうほど美味しかったんだ。安藤さんのケーキ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まあな。」
安藤に義理なんかないけど、
好きな相手にあのスイーツ兵器を食わせたなんて経験は、なければないほうがいいだろう。
俺って気苦労性・・・・。
「そ。安藤さんって頭良いし、可愛いし、その上料理上手なんて何でも出来る子だねぇ。スゴイな。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だな。」
料理を除けば。
ともあれ、オマエが知ったような言い方すんな。
名前を聞いても直ぐに思い出せなかったくせに。
「そっか、そっか。料理上手いんだ。じゃ、今度はアップルパイでもオネダリしてみよっかな~。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうしろよ。」
なんだってコイツは自らアルマゲドンを呼び寄せるような無謀なことを言い出すかな。
俺は出来上がった新型最終スイーツ兵器を思い浮かべて、よろりと立ち上がって部屋へ向かった。