たったひとつ

「ダメ?」

そんな子犬みたいな顔、ずるいよ。

「ダメ、じゃ・・・」

最後まで言い切る前に重なった唇。

「ダメじゃないって言おうとしたよな?」

湧哉は悪戯に笑った。

「もぉ!」

ドキドキが止まらないから湧哉の腕から

逃げようとした。

「だーめ♪」

湧哉はもう一度私にキスをした。

「恥ずかしいぃ・・・」

私は耐え切れずしゃがみこむ。

「ごめんごめん!でも俺超嬉しい」

そんな彼の笑顔を見たら私も

嬉しくなった。

「帰ろっか」

私達は手を繋いで学校を出た。



帰る途中コンビニの前には私達の

学校の生徒がたまっていた。

「お!湧哉彼女とラブラブだなぁ♪」

誰かが私達を冷やかす。

「うるさいですよ!さよならっ」

湧哉が敬語を使ったからきっと相手は

先輩だ。

「サッカー部?」

私はたずねた。

「ん、無視していいよ」

あはは、なんて笑ったけど私の心臓は

壊れるんじゃないかってくらい

ドキドキしてた。たくさんの人の中に

入学式で見かけたあの先輩がいたから。
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