《完》天上のCANON 〜先生と奏でる、永遠のメロディ〜
それから毎年、お姉ちゃんを
溺愛していたお母さんは、
秋口辺りからふさぎ込み、
ウツみたいになる。



それがあたしにも、本当に
辛かった。



だけどお母さんはお姉ちゃんの
残像ばかり追いかけて、もう
これっぽっちもあたしを
見てない。



だからあたしは、そんな
お母さんとあまり顔を
合わせないでいいように、
いつもギリギリまで学校に
残るようにしてた……。



(だけどもう――それも、
やめよう)



その日家を出る時、あたしは
心の中で静かにそう誓った。



お姉ちゃんの命日まで、
あと10日あまり。


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