君がいるということ。
マリオネット扱いに反発心を覚え、相変わらず肩に力が入る詩花だが、皮肉なことに、絵の、「家にはいってからにしろよ」と言う声に誘導され、また反対に向きなおす羽目になってしまった。
「詩花、自転車かして」
ドアを手前に引き、全開にすると、臣は詩花の自転車をひいて中に入っていった。
自分が入らないと後ろの二人がつっかえてしまうので、しぶしぶ詩花も中に入る。
しかし顔を上げたとたん、詩花はいきなり開かれた視界に目を細めた。
外から見るよりもずっと木々が高くそびえている。
様々な種類の木が見下ろすように立ち並び、まるでそれが空という天井に繋がる壁のようだった。外にいるときよりも、ずっとずっと空が高く感じた。
吸い込まれてしまいそうな感覚に、詩花は目を下に落とす。
そこはまた、吸い込まれそうな世界だった。
家族に園芸が好きな人がいるのか、あちこちに煉瓦で囲まれた花壇がある。
その煉瓦が足下にも引かれており、ドアから緩やかな曲線を描きながら向こうに見える家とを繋いでいる。
路中、それはいくつか枝分かれし、どこかに繋がっていた。