君がいるということ。
その先を見ようとした詩花は、ふと今通ったばかりのドアが目に入り、前を行く臣を見る。
「ってか失礼だけどドアのつける場所間違ってね?」
自転車をあたかも自分のもののように引いていく臣の横に小走りで並びながら、詩花が問う。
「んー……」
臣がそうもらしながら首を傾げると、後ろから湖が詩花の肩を叩いた。
「俺らの父ちゃんはね、臣そっくりでノー天気だから、こんなんになっちゃったの」
湖が笑いながら言う横で絵は静かに頷く。
しかし詩花はどう返事をすればいいのかわからず、愛想笑いをしながら臣に向き直った。
それと入れ替えに臣は振り返る。
「二人とも今日は自宅学習?」
「あー。今日は既にギターさえ学校に持ってってねーしな」
「場所あいてないし」
臣は「だよねだよね」と頷きながら、詩花の肩をとる。
「俺らも場所なくって。湖ちゃんたちどこ使う?」
肩を取られながらも自分は入ることができない会話を聞いて、詩花は何となく推理をする。
大体この三人の関係も何の話かもわかった。
だが、この肩にある手は無くても良いのではないだろうか。