君がいるということ。
詩花が苛立ちながら黙っていると、重みがかった肩からパチっと言う、何かが弾けたような音がした。
臣は痛みが走った手をしぶしぶ下げていく。
「女の子に簡単に手えだすな」
絵が臣に言う。
どうやら音の発信源は絵だったようだ。
湖は相変わらずの無表情のままの絵の横でくくっと笑い、「怒られてやんの」と臣のほっぺたをつねった。
「なんだよお。湖ちゃんだってそうじゃんか」
痛いと顔をゆがませて、臣は湖の手を振り払う。
いざ二人の言い合いが始まると言う頃、絵の手によって、やっと目の前まで来た家のドアが開けられた。