秘密のMelo♪y⑤*NY編*
―――……
『なにも踏むことねーだろ!』
『あたしじゃないわよΣ』
『メイリー以外に誰がするんだよ』
「なにか文句?」
『ハッΣ……マ、マヒロ…?』
すぐに起きてくれたみんなはどことなく(どこから見ても)不機嫌だったけど、あたしのさらに不機嫌な声に黙り込んだ。
―ビーッ
『着陸しますので、お気を付け下さい』
そして運転席からの野木さんの声。
もうこの時のあたしは、自分の心臓の音で周りがかき消されそうだった。
鼓動が早まりすぎて苦しいくらい。
緊張で冷や汗が流れた。
「荷物も大してないし、あるものは野木ちゃんに任せときなさい。お前は何も持たなくてよろしい」
着陸後、父様がそう言ってあたしを連れて足早に降りた。
その後ろにみんなが続いているのが分かった。
「野木さんお願いね」
歩きながら顔だけ後ろに向けて伝え、祈るような思いで父様について歩いた。
どこに向かっているのかは分からない。
周りを見たって知らない景色。
人はほとんどいなくて、それでもあたしは帽子を被せられていた。