桃染蝶
一夜は、拳銃を持つ手を頭上に
高く掲げ、天に向けて打ち込む
銃弾は、二発。

その銃声に、男達は知る。

高月組の勝利を。

そして、この一夜(ひとよ)に
舞う最高の男の姿を見つめる。

その最後の時を黙って見つめる

「やめろ、終わりだ  
 
 ここに、幕切れ

 後始末は、アンタに任せる

 終わったら、いつでも
 高月に顔出せ歓迎する」

「はい」

男の肩を叩いて、一夜は一歩を
力強く踏み出す。

「おいっ、おまえ等

 帰るぞ」

一夜の後ろを歩く連中は、皆
ボロボロで、見たものはこれが
あの高月組なのかとあざ笑う
人間もいるだろう。

だけど、今の男達にはそんな
ことは、もうどうでもよかった
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