桃染蝶
笑いあう声。

「何だ、ショウ
 その顔」

「ハツマ、うるせえよ
 
 なあ、アニキ?
 いつの間にあいつに
 接近してた

 また、一人で動いたのか?
 勝手な真似は・・・」

「うるせえよ、忘れた

 終わった事、いちいち
 覚えてねえよ」

高月組本部事務所前

停められた車から降りる一夜は
暗黒の空を見上げる。

星も、月も、ない空にこれまで
歩んで来た過去の残像が浮かび
そして、消える。

佇む、一夜の、その後ろ姿に
男達は憧れ、そして追いかけた

大好きな兄貴の後ろ姿を正二は
見つめ、言う。

「アニキ、あんた・・・
 最高だったぜ」
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