桃染蝶
女の元へと歩み、女の肩を抱き

憧れの男は、高月組を去った。

「イチヤのバカ

 アンタまでいなくなったら
 私には、もう・・・

 何も無い」


そう、おまえにはもう

俺しかいない

俺しか・・・


「明日からは、ずっと
 おまえのそばに居てやる

 だから、もう泣くな」

「ほんとう?」

「ああ」

涙を浮かべ見上げる沙織の唇
に口づける一夜。

沙織を強く、その腕に抱く。

どうか、もう嘆かないでくれ。
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