桃染蝶
「ほらほら

 暗いのは終わりだ」

「ショウに、ハツマ
 
 おまえ等に
 高月組の未来を託す
 
 後は、任せたぞ」

「「はい」」

その時、駆けてくる足音が
聞こえる。

「イチヤ」

夜の街に立ち止まる女が一人。

泣いてるのは、おまえ?

「サオリのやつ
 また・・・」

正二の肩を強く叩く、一夜。

「ショウ、じゃあな」

一夜は、片側の口角を上げ
微笑んでみせた。

正二も、微笑む。

「アニキ、また」

一夜は背を向けたまま、二度
手を振った。

一夜が正二に触れ微笑みかけた
のは、この日が最後だった。
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