桃染蝶
「もう、やめよう

 終わった事、グダグダ話す
 だけ時間の無駄だ

 それより、カヤ
 話は明日にして、おまえは
 もう休んだ方がいい
 
 腹の子に差し支える」

ガシャン・・・

「ご、ごめんなさい」

私のお腹をじっと見つめる
沙織さんの瞳は悲しく潤んで
濡れていく。

私は、疑問に想った事がある。

『ガキが生まれるんだ』

ショウの言葉・・・

ショウの子供を身篭っている
はずの沙織さんの腹部は
すっきりとして細く、辺り
赤ちゃんの姿はもちろん
ベビーベッドもない。

まさか、流産?

「サオリさん、あなた・・・」

「うん、何?」

床に落ちたグラス、その
ガラスの破片に触れようと
手を伸ばす彼女のきれいな
指先。
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