藤井先輩と私。
私がぶつかったのは、同じくらいの年齢の野球帽を深くかぶった男の子。
手をこちらに伸ばして「だいじょうぶ?」とまた言った。
「うん」
私は男の子の手をつかんで立ちあがった。
「ごめん、すごいケガさせちゃったね。びょういん…」
男の子は病院まで言うと口をつぐんだ。
「ちがうの!…これ、こうえんで一輪車してたらこけたの…びょういん怖いからだいじょぶ」
伏し目がちに言うと、
「そっか、びょういんこわいもんね。僕もキライ」
そう言って笑った。
「あぁ、そうだ!これ貼る?」
ポケットから絆創膏を取り出した男の子。
「僕もよくこけるから、ママが……もたせるんだ」
そう言った男の子の瞳は、少し悲しそうで、泣きそうな顔をしていた。
それから近くのベンチに座って男の子は私のケガの手当てをしてくれた。