藤井先輩と私。
 
「……はい?」


「ここは、どこだろう?」



「駅ですけど」



「駅だったのか、ここは!」


なにをおっしゃってるのでしょう。


ダンディなジェントルマンさんをもう一度ゆっくりみてみると、おかしな部分を発見した。

手に持っている物。

「……それ」

「あぁ、実は僕、方向音痴でね、地図がないとだめなんだよ」


えぇと、しかしですね。
その地図は…。


「それって、世界地図ですよ?」


「そうだけど?」


紳士スマイル眩しすぎます。


「この地図を見てここまで来たんだけど…なかなか目印とかなくてね。やっぱり迷ってしまったよ」


逆に凄いです。
世界地図でここまでくるなんて。

そもそも目的地ってどこなんだろう。

「どこに行きたいんですか?」


「○△町なんだが…」

先輩の住んでる町だ。


「でしたら、電車ですぐですよ?」

「そうかい?ありがとう」


ダンディなジェントルマンは、私の両手を持って握手をすると、本屋の方へ歩いて行った。



「あの!」


…まさかだけど…。


「どこに行こうとしてます?」


一応聞いておこう。



「切符売場だよ」


あちゃー。


この人、きっと一人じゃ○△町に辿りつけないよ。

「あの…もし迷惑じゃなかったら、案内しましょうか○△町まで」


そう言うと、ジェントルマンさんは、とびっきりの笑顔になった。

 


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