藤井先輩と私。
「……ほぇ?」
我ながらなんともアホらしい声を出してしまった。
しょうがないじゃん!
だってパパさん、泣いてるんだもん。
「……すまない…男らしくないな。涙なんて」
眉間をおさえて涙を止めながらパパさんは、笑う。
そして、高級そうなスーツの袖で涙をぬぐうと、片方の手で私の頭をなでた。
「ありがとう、陽依ちゃん」
頭に乗せられた手がそっと離れる。
「そうだよな…。悠太は藤井悠太であって、藤井剛とは別人だものな。…そんな些細な事、人に言われるまで気付けないなんて、どこまで僕はダメ親父なんだろう」
「…ちがいますよ」
パパさんは変わったじゃないですか。
藤井先輩が話す面影なんて一つもないじゃないですか。
「パパさんは、ダメ親父なんかじゃないです。過去は変えられないけれど、パパさんは頑張ったんじゃないですか?過去を振り返って反省して…だから今ここにいるんですよね?」
私には、優しいパパさんだとしか思えないもん。
「………君は泣かせるのが得意らしい」
「えっ?」
パパさんはプイッと私から顔をそらした。
頬には一筋の涙が光っていたのが見えたから、パパさんは多分…。
……つぎは藤井先輩だ。
言いたいこと言っちゃいます!
私とパパさんのやりとりをじっと見ていた先輩の方に体を向けた。